観光客の目線から、観光を受け入れる側の目線へ

私たちは普段、観光客としての価値観で観光をイメージしています。しかし、ビジネスとして捉える時には、観光客を受け入れる側の目線で、必要な取り組みや仕組みを考えていかなくてはなりません。いまや観光は、世界的に有望な成長産業の一つ。「観光学」の授業では、観光地のプラスとマイナスの両面を取り上げ、これからの観光のあり方について理解していきます。

「世界遺産を学ぼう! 」と題した今日の授業は、世界遺産アカデミーからお招きしたゲスト講師、世界遺産検定マイスターの豊崎美紀氏によるレクチャー。授業の担当教員、阿部純一郎先生による解説と紹介の後、世界遺産のリアルな現実についてお話をしていただきました。日本では、観光客を呼び込む手段の一つとして世界遺産登録を歓迎する傾向がありますが、世界遺産条約は本来、「人類共通の宝」を守るためのもの。日本ではまだ、その視点が育っていないという指摘に、学生たちは熱心に耳を傾けます。

観光資源でもある世界遺産をいかに維持するか

自然遺産や文化遺産として評価された価値が、世界遺産登録を機に押し寄せた大勢の観光客によって破壊されてしまうようでは本末転倒です。そのような事態を避けるには、やみくもに観光客を受け入れるのではなく、ルールや制度をつくって管理していく必要があります。ゲスト講師の豊崎氏は、外国の世界自然遺産ではどのように観光客のコントロールが行われ、どのように観光資源が維持されているのかを、日本の世界自然遺産のケースと比較して解説。持続可能な観光には観光資源の保護が不可欠であると訴え、世界遺産検定を紹介して話を終えました。講義後には、熱心な学生からの「世界遺産検定1級に必要な勉強とは?」などの質問にアドバイスを返していました。

2018年度の授業では、日本の世界自然遺産の一つである小笠原諸島のPRを担う小笠原村観光局からもゲスト講師を迎え、立地的に不利な離島へ観光客を呼び込む方策についてお聞きする機会もありました。

本格的な観光研究の下地となる学び

ゲスト講師を招いた今回は、具体的な観光地の事例を挙げて持続可能な観光に必要な制度やサポート体制について考えを深める、「観光学」後半の特別授業に当たります。日頃は、阿部先生が観光研修プログラムやゼミ活動などで調査を進めている小笠原諸島、篠島などの具体的な事例が中心です。たとえば、一時期の低迷期を経て東海地方の人気スポットになった犬山城下町を、観光が地域課題の有望な解決策となることを示す貴重なケースとして取り上げました。また、授業の前半では、交通手段の進歩や旅行会社の誕生などによって発展してきた日本の観光の歴史を導入として学んでいます。

「観光学」は、2、3年次に配置されている「観光とホスピタリティ」「観光産業論」「観光デザイン論」で本格的な観光研究を進めるための下地をつくる学び。ゼミで体験する本格的なフィールドワークや研究活動の入り口としても欠かせない、基礎を培う授業です。

文化情報学部 文化情報学科 阿部 純一郎 准教授

地域の隠れた魅力を
発見する眼を培おう

文化情報学部 文化情報学科 阿部 純一郎 准教授

インターネットを通じて、誰もが簡単に、旅行に欠かせない宿泊手配や交通手段の確保、情報収集などを行える時代になりました。これからの観光ビジネスに求められるのは、お客様に地域の特別な魅力をプレゼンテーションできる専門的な情報発信です。一方で、観光ビジネスの成功には、行政や地域住民それぞれの利害の調整が欠かせません。本学科では、ゼミ活動でのフィールドワークを通して、観光地の現場で働く方々と関わり、その魅力の発信を試みてきました。小笠原村観光局のPRイベント「小笠原DAY」への参加や、犬山城下町での古民家カフェの実現、なかでも篠島の自然・歴史・食を味わう観光振興プランは、「あいち学生観光まちづくりアワード」で最優秀賞を受賞し、ツアーとして商品化されました。どんな場所にも必ず魅力があります。観光学を通じて、地域のポテンシャルや再生のヒントを見出す眼を培い、いずれは地域を担う一員として活躍してほしいと考えています。