病気の成り立ちや治療方法を知る

医師の診察や患者さんへの援助を行う看護師にとって、病気の成り立ちや治療に関する知識は欠かすことができません。「病理学」は、主に循環器、呼吸器、消化器、脳神経系などの疾病について学ぶ授業です。「科学的根拠に基づいた看護実践(Evidence-based nursing)」に生かせるように、病気のメカニズムを理解していきます。

授業は大講義室で行われ、担当教員の早川先生によるオリジナルの資料やスライドを使いながら進められます。消化器系疾患について学ぶ今日の授業は、胃がんの症例を紹介。身近な病気であることを実感してもらうため、胃がんで亡くなられた有名な方を例に挙げ、病気が起こるメカニズムの解説へと入ります。教科書には難しい医学用語が並んでいますが、早川先生は学生が理解しやすいようにとイラストや図解、動画などの視覚的な工夫を凝らして授業を進めていきます。

看護師としての素養を身につける

たとえば、胃潰瘍や胃がんの原因であることが解明されているヘリコバクターピロリ、通称ピロリ菌。早川先生はイラストを使って、このヘリコバクターという名称にはヘリコ(螺旋)と、バクター=バクテリア(細菌)の意味があることを説明していきます。ピロリ菌の発見につながった2人のノーベル生理学・医学賞研究者の印象深いエピソードも、学生の記憶に残るように写真を提示しながら紹介しました。特に早川先生が強調したのは、このピロリ菌の発見が胃がんの治療に大きな変革をもたらしたこと。現在、ピロリ菌は高い確率で投薬によって除菌・予防できる病となりました。近い将来は患者数が大きく減少することが予測されています。このように、社会に与える医学の影響をきちんと捉えられることも、看護師の素養として必要です。

2年次以降の学びの基盤を形成

「病理学」は、看護の専門科目すべてにつながっており、知識の基盤を築く大切な授業です。1年次に並行して学ぶ「解剖生理学」や「生化学」など、専門基礎科目の内容を再確認しながら知識の統合をめざします。また、2年次以降にはさらに高度な専門科目を積み重ねていくことになるため、1年次から能動的に学ぶ姿勢を身に付けておくことが大切です。早川先生は、「病理学」を学ぶことは、今後のより難易度の高い勉学に挑むためのトレーニングになると考えています。各回の学習テーマに併せて、看護師資格の国家試験の過去問題も積極的に紹介し、学生たちの理解を助ける手立てとしています。

授業内容は、医師である早川先生の視点から語られます。実際に病院で医師と協働する際に必要となる看護師の役割を理解してほしいからです。さまざまな知識を身に付け、看護師としての思考や視野を広げることもこの授業の目的なのです。

看護学部 看護学科 早川 幸博 教授

看護師の卵である前に、
一人の人間として

看護学部 看護学科 早川 幸博 教授

病理学は、全身の各臓器や組織に生じる基本的な病態が、疾病の成り立ちにどのように関係しているかを理解する学びです。たとえば炎症、免疫、腫瘍、代謝障害、循環障害などの病理学的な概念を知り、その要因を紐解いていきます。授業では、できるだけわかりやすく病気のメカニズムや最新の治療技術をお伝えするようにしています。教科書自体は難しい内容を扱っていますので、できるだけわかりやすく噛み砕いて説明できるように、オリジナルの資料を用います。さらに、私が臨床の現場で医師として働いていた時の経験を話しながら、看護師はどのような役割で、どのような対処が求められるのかを常に投げ掛けるようにしています。そうすることによって、ものの見方を広げ、考え方の幅を広げてもらいたいのです。これから看護師を目指すみなさんには、この学びを通して看護・医療の専門知識にとどまらず、社会を見渡す視野を養い一人の人間として成長してほしいと思っています。