博物館の目的と機能を知り、そのあり方を考える

私たちの身近にあり、展示を通してさまざまな知に触れることができる場所が博物館。「博物館概論」は、博物館とはどのような場所か、どのような社会の流れのなかで作られた施設なのか、館内で学芸員はどのような仕事をしているのかなどの理解を通して、そのあり方について考えていきます。学芸員課程で「学芸員」資格の取得をめざす学生は、4年次の「博物館実習」に向けて3年次までに単位を取得しておくことが必要となる科目です。学芸員課程以外の多くの学生も履修しています。

普段は講義形式で進められる「博物館概論」ですが、この日はキャンパス内にある椙山歴史文化館※で行われました。他の授業などを通して訪れたことはあっても、博物館の意義を理解したうえで館内を観察する機会は初めてとなります。学生たちは、来館者の立場になって、「展示が見やすいか」「説明はわかりやすいか」などの点に注意しながら館内を巡り始めました。※星が丘キャンパスの中央図書館内にあり、学園の歴史や教育理念、創設者の足跡などの資料を展示している。

椙山歴史文化館の展示物を評価する試み

学生たちが手にした用紙は、担当教員の見田先生が用意したワークシート。そこに、「博物館としての機能がきちんと満たされているか」という観点で、評価を書き込んでいくことになっています。もう5年以上続くこの授業内の試みを通して、過去には「スポットライトがガラスケースに反射して眩しい」「展示品が重なっており詳細が見にくい」などの意見が集まりました。その都度、椙山歴史文化館の展示には、先輩たちの指摘を取り入れた改善点が反映されてきたのです。

たとえば、椙山女学園の創設から1世紀余りにわたる歴史を感じることができる「制服の歩み」の展示コーナー。「過去の制服を着てみたい」という要望を取り入れて、割烹着のように簡単に装着できる試着用の制服が用意してあります。試着体験を楽しみながら、着心地などを検証することがこの授業での大切な学び。来館者としての視点で、展示を提供する学芸員側の趣旨を理解していきます。

博物館の役割と、学芸員の仕事を知る

「博物館概論」では他にも、資料の整理・保存、調査・研究、展示・教育などの役割を果たす博物館の機能とともに、その裏方として地道な作業を務める学芸員の仕事についても学んでいきます。たとえば、東日本大震災の津波被害で流された資料を東北地方の博物館が回収・修復して公開するまでの道のりや東京国立博物館の歴史的な歩みを動画で観たり、資料を食い荒らす昆虫やカビの種類を学んだり。扱い方を間違えて資料を痛めてしまう人災についても考えていきます。

博物館学芸員の仕事は非常に募集人数が少なく、就職の面では狭き門です。しかし、博物館の運営に関わる仕事は、ディスプレイ業、広告宣伝業、運送業など多彩にあります。博物館に関する専門知識は、一般企業に就職した場合でも、広報業務など企画・展示に関わる知識が生かせる場面があります。これまでに履修した学生からは、「得るものが多かった」という声が寄せられる意義ある授業です。

文化情報学部 文化情報学科 見田 隆鑑 准教授

この社会に博物館がある意義とは何か

文化情報学部 文化情報学科 見田 隆鑑 准教授

博物館とは、どのような場所でしょうか。思い浮かべてみてください。ハリウッド映画に登場した大きな博物館を思い出す人もいれば、古いレンガづくりの重厚なイメージを想像する人もいるでしょう。他にも、皆さんが幼い頃から何度も訪ねた動物園、水族館、科学館、美術館は、すべて博物館の仲間です。身近なところでは、愛知県内にある「博物館明治村」、「野外民族博物館リトルワールド」も、野外博物館の代表例。このように具体的な例を挙げていくと、私たちは自身の成長過程で、さまざまな博物館で多くの学びに触れながら成長してきたという事実に気づきます。博物館は、単にものを収集して展示している場所ではなく、社会的な責任のもとに今を生きる人びとに多くのことを伝え、後世にきちんと手渡していく使命を帯びた重要な施設なのです。「博物館概論」で学ぶ基礎的な知識を通して、自分にとっての博物館の意義を考えてみましょう。