文化とは何か、コミュニケーションとは何か

なぜ私たちは人とコミュニケーションを図ろうとするのでしょうか、考えてみたことはありますか? コミュニケーションの目的の一つに、「他者と親しくなりたい(親密になりたい)」というものがあります。相手と親しくなりたい時、人はどのような行動をとるのでしょうか。こうした対人関係構築のメカニズムにフォーカスを当てるのがコミュニケーション学という分野です。「異文化コミュニケーション論」の授業では、異なる文化背景を持つ者同士のコミュニケーションを取り上げ、日本人と異文化の人々とではどのような違いがあるのかを見ていきます。この講座では、日本人との比較対象として、英語圏の人々を中心に、いわゆる欧米人のコミュニケーションのあり方との違いを考えていきます。

全15回の授業のうち2回目となる本日のテーマは、「文化とは何か」。異文化コミュニケーションを考える際、「文化」や「コミュニケーション」に関する理解は欠かせません。担当教員の笠原先生は、「皆さんは、文化という言葉から何を思い浮かべますか? 」という質問から授業をスタートしました。

「暗黙のルール」はルール違反を指摘されて初めて気づくもの

学生たちが、「文化」という言葉から思い浮かべるものとして、「能・狂言」「歌舞伎」「文学作品」など、さまざまものがあがりました。しかし笠原先生は、「残念ながら、この授業で取り上げる文化は、そうした『高等文化』ではなく、私たちの日常の営みの総体である『一般文化』の方です」と解説していきます。続いて、「これまでに、自分が当たり前だと思っていた発言や行動に対して、違和感のある反応や対応をされた経験はありませんか?」と問いかけると、学生たちはそれぞれ自分の経験を思い浮かべている様子。続いて笠原先生が示した、「日本人にとっての当たり前」の一例に、皆が思わず頷きます。「遠足や修学旅行時に、先生から言われ続けてきた“5分前集合”、これもまた日本人の文化の一端ですね」。この日本人特有の時間観に、海外留学を経験した学生から「留学先でクラスメイトと待ち合わせをしたが、特に中南米から来ている学生たちは時間通りに来たためしがなかった」と、時間観の違いが原因となる異文化ミスコミュニケーションに遭遇したエピソードが語られました。

文化による違いを測る“ものさし”が教えてくれること

こうした一般文化における違いが身近なものだと理解することで、授業はさらに深まります。各回の授業では、この学問の先駆けと言われる二人の人物、ホール[Edward T. Hall]とホフステード[Geert Hofstede]が提唱した文化可変性の指標[The Indexes of Cultural Variability]を使って学んでいきます。講義室に映し出されたスライドのタイトル部分に大きく記されているのは、「Culture is Communication and Communication is Culture.」(Hall, 1959)というホールの言葉。ホールやホフステードが作った、この文化を測る “ものさし” をあてると、各国の文化的特性やその違いが明らかになります。まさにホールの言葉通り、「文化」と「コミュニケーション」は表裏一体の関係にあることがわかります。

「異文化コミュニケーション論」で使用する専門用語には必ず英語表記が添えられています。これは3年生以上科目にある「Principles of Intercultural Communication」という、異文化コミュニケーションについてAll Englishで学ぶ科目がありますが、翌年、学生たちがこの科目を履修することを想定し、まずは日本語でこの分野に関する基礎知識を身につけてほしいという意図から行われていることです。

国際コミュニケーション学部 国際言語コミュニケーション学科 笠原 正秀 教授

異文化を知り、
真のコミュニケーションを

国際コミュニケーション学部 国際言語コミュニケーション学科 笠原 正秀 教授

同じ町内会に外国人の方がいたり、会社や学校で机を並べる同僚やクラスメイトが外国人であったりすることが珍しいことではない現代社会。異文化コミュニケーションに関する知識や理解は誰にとっても必要不可欠な時代となりました。異なる文化背景を持つ人たちとより良い関係を築くにはどうしたら良いのか、また自分自身が海外に出て異文化の中で生活する際、どのようにコミュニケーションを取ったら良いのか、「異文化コミュニケーション論」では、その答えとなる研究成果・調査結果をもとに、実践で役立つ知識を提供しています。その過程で明らかになるのは、私たち日本人の文化は、欧米の文化とは大きくかけ離れているということです。つまり、いくら英語が堪能であっても、それとコミュニケーションの成否とは別の話なのです。ぜひ、海外に出る前にこの授業を履修していただき、文化によるコミュニケーションのあり方の違いを理解し、その実践の場として、海外で異文化との遭遇を経験していただきたいと思います。