どんな時も患者さんに気持ちを向けて動くために

病中や手術後など身体の具合の悪い人がなるべく安楽に食事や排せつなどの日常行為を行う際に求められるサポートとは? また、診療や治療を受ける人に対する適切な援助や気配りとは? これら看護師が行う具体的な援助技術の基本を理論と実践を通して学ぶ授業が、1年次前期から2年次前期に渡って授業が展開する「基礎看護技術演習」。看護師国家試験の必修内容であり、看護師としての本質を培う学びでもあります。

この日の授業は、医療現場での診療援助技術を学ぶ2年次前期の「基礎看護技術演習III」のうち、「酸素吸入、口腔内吸引」の模擬実習。患者さんの喉に詰まった異物を吸引して取り除く「酸素吸入」の実践では、学生同士で粘膜を傷つけないようにカテーテルの先端を口に挿入し、対象物まで到着させてから吸引圧をかける演習を行いました。

学生7,8人に先生1人が指導する少人数制

授業までに教材で予習して動きのイメージをつくってきている学生たちも、他人の口にカテーテルを挿入することは初めて。恐怖心でいっぱいの様子です。しかし、学生7,8人に対して1人の教員が配置される少人数体制のため、先生自身によるデモンストレーションを目の前で確認できます。また、間近で見守られてチェックや指導をもらったりすることによって、次第に心理的な抵抗感を克服。無事に口に含んだゼリーを吸引することができました。

この授業では、単に技術を学ぶだけでなく、現実の看護現場で求められる安全性やスピード(効率性)に配慮した動作、手順の修得をめざします。たとえば、酸素吸入器を患者さんのもとへ運ぶ際には、その前に必ず酸素ボンベの残量を確認します。施行途中で、酸素切れを起こすことは生死に関わるからです。こうした具体的なシチュエーションを経験することで、その時々に求められる最適な動きを理解していきます。

授業は、確実に身につけるための第一歩

「基礎看護技術演習」で修得するのは、援助技術の手順や方法だけではありません。対象となる患者さんが①安全であること ②安楽であること ③回復に向けた自立性を損なわないこと ④倫理的であること ⑤看護の動き一つひとつの目的や手順を理解したうえで物品や身体を効果的に使う「動作経済性」が高いことの5つを統合して、看護技術として身体表現できるようになることが目標です。どんな時も看護の対象者に意識を向けて、こころや身体が動ける状態をめざします。また、「フィジカルアセスメント」や「看護倫理」など並行する他の授業でも知識を蓄えることで、看護計画を作成して進める2年生後期からの学びの土台を形成していきます。

看護技術は、何度もトライ&エラーを重ねることで、できるようになるもの。それだけに、学生の自習活動は欠かせません。看護学部棟では、自発的に授業外の時間を使ってグループで練習に励む学生の姿が見られます。実習室には口腔内・鼻腔内吸引用の人形モデルや消耗品などの物品が用意され、先生に指導を求めることもできます。このような充実した学習環境が、本学の高い国家試験合格率を支えているのです。

看護学部 看護学科 髙植 幸子 教授

「人間になろう」を
体現できる看護師をめざして

看護学部 看護学科 髙植 幸子 教授

看護師は、いくつもの課題が同時進行する医療現場の第一線で常に選択を重ねて働いています。どんな時も適切に行動するために、これまでの看護師たちは拠りどころとなる看護体系を培ってきました。その基本軸とも言える基礎看護技術を学ぶことは、これから看護師となるあなたを長く支えてくれることでしょう。ただし、ノウハウとして学ぶだけでは、的確な行動を促すこころは育ちません。看護師の適性は、人の役に立ちたい、人を傷つけるような言動はしないなど、人としての基本を大切にできるところにあるからです。そのために、本学の看護学部では、看護師の養成科目だけでなく、椙山女学園大学が提唱する「人間になろう」の精神を体現するための教養科目や体験学習を多彩に用意しています。どんなことでもいいから一生懸命に頑張ってみてください。その経験が、「人間になろう」に基づく立派な看護師としてのデビューにあなたを導いてくれることでしょう。