アパレルデザインを表現するための技法

アパレル業界では、縫製やパターンなどの技能に限らず、ものづくりに欠かせない創造力やコミュニケーション能力、発信力が求められます。「ファッションプレゼンテーション」は、ディスプレイ装飾などに使われる造形表現方法と、アパレルデザインの情報発信について学ぶ授業です。布そのもの、裁断と縫製という3つの段階に分けて、表現テクニックとプレゼンテーション技法を身につけていきます。

今日からは、授業の最終課題である2分の1ボディを使った衣装の実制作に入ります。制作物は、履修生同士で話し合って定めた今年のテーマ、「民族服」。一人につき一種類の衣装を制作するため、完成すれば合計36国分の民族服が揃います。前回の授業では世界地図を広げて国ごとに担当者を決めました。スイスやオーストリアなどの可愛らしい衣装に人気が集中しましたが、学生たちで解決し、それぞれが担当する民族服の色や形などの情報を調べて持ち寄って今日の授業に臨みました。

着るためではなく、見せるための衣装づくり

実際に取り掛かってみると、資料による情報だけでデザインや造形を進めることに苦戦している様子の学生たち。1、2年次にブラウスづくりができる技術力を身につけた履修生ですが、この授業では創造力が試されます。授業中は、担当教員の石原先生の後ろに順番待ちができ、「どうすればこんな風になりますか?」「このシルエットはどうやってつくるんですか?」などの質問がひっきりなしに飛び交っていました。

「ファッションプレゼンテーション」では一貫して、人が着ることを前提とした衣装はつくりません。民族服は、着脱できるようにファスナーなどを設けますが、人体の2分の1サイズ。授業前半では、ハサミを入れることなく布1枚でギャザーやドレープを寄せてボディにピン留めするピンワークと、裁断はするもののピンだけで形をつくって実物大のボディに纏わせていくウエディングドレスの制作を学び、店舗やショーウインドウなどのディスプレイに使える技術を身につけます。

どのような職業でも役立つ情報発信スキル

「ファッションプレゼンテーション」の授業は、ものづくりだけで完結しません。プレゼンテーション技法としてピンワークでは、パソコンでPublisherを使用し、ウェディングドレス制作では手作業でプレゼンテーションボードを作成します。また民族服制作ではパソコンでPowerPointを使用して発表用コンテンツを制作し、発表します。将来、椙山女学園大学を卒業してアパレル業界で働く際には、縫製などの生産に関わるスキルよりも、発想を作品にするための企画力や創造力、商品の魅力を伝える情報発信力が必要とされることが多いと考えられます。総合職や販売職にも、プレゼンテーションスキルは必ず役立つでしょう。

こうして3年次前期に「ファッションプレゼンテーション」を学んだ後には、3年次後期に裏地まで取りつける本格的なスーツ制作の課題が用意されています。その発表の舞台は、1、2年生と合同で行うファッションショー。後輩の学生にとっては、先輩たちの作品を今後の自らの制作のヒントにする大切な機会となっています。

生活科学部 生活環境デザイン学科 石原 久代 教授

現代社会で活躍できる
アパレル人材の養成へ

生活科学部 生活環境デザイン学科 石原 久代 教授

インターネットの普及によって、アパレル業界の情報発信は劇的に変化しました。SNSなどを通じていつでも誰とでもつながることが可能な世界で活躍できる、情報発信能力を備えたアパレル人材の育成が急務であると感じます。私の担当するゼミでは、授業で使用するパブリッシャーやパワーポイントなどの資料作成ソフト以外にも、ものづくり情報を共有できるプラットフォームであるインストラクタブルなどを活用して、ハンドメイドのレシピを英語で世界へ発信しています。社会ですぐに活用できるスキルの習得を通じて「自分から発信する力」を磨いてほしいと思います。「ファッションプレゼンテーション」は、緻密に正しく縫製することよりも、創造力や発想力を活かしたものづくりに重きを置いた授業です。生活環境デザイン学科には、教職をめざす学生も少なくありません。楽しく学んだ経験を通じて、生徒や世界に被服学やアパレルの魅力を発信できる人になりましょう。