日本を代表する日記文学6作品に親しむ

「土佐日記」「蜻蛉日記」「枕草子」「紫式部日記」「和泉式部日記」「更級日記」。「日記文学」の授業では、平安時代を代表する日記文学6作品を順に取り上げながら、平安貴族の生活様式、当時の人々のリアルな心情を理解していきます。今日の題材は「土佐日記」。冒頭で配られるプリントは、作品の内容や特徴的な表現などがまとめられた高橋先生の手づくり。授業中、ノートを取ることよりも、作品世界に浸って欲しいという先生の優しさが詰まっています。

土佐日記は、土佐守の任を終えた紀貫之が、京に帰着するまでの55日間を綴った旅日記。女性になりすまし、「女手」と呼ばれた仮名文を用いることで、その感慨を自由に綴っています。「文章を書く=男性が漢文で書く公的な記録」だった当時、これはとても画期的なこと。有名な土佐日記の冒頭「をとこもすなる日記といふものを、をむなもしてみむとてするなり」は、個人の私的な内面を書いていくぞ、という紀貫之の宣言なのです。

古典文法は、物語を読み解くためのツール

授業では、仮名の変遷や、ポイントとなる文章の文法などもしっかりと解説されます。といっても、ここで学ぶ文法は、あくまで文章を正しく読むためのツール。プリントにもわかりやすくまとめられていますから、古典文法が苦手な人も無理なく理解できます。

仮名文を用いることによって、個人的な感情の表現を可能にした紀貫之。これをきっかけに、「蜻蛉日記」を始め、女性による多くの日記文学が生まれました。次回以降の授業で各作品を深く学んでいきますが、注目すべきは高橋先生のユニークな視点です。例えば、清少納言と紫式部。何かとライバル視されるこの二人は、日記の内容も好対照。当時の日記を今のSNSに置き換えると、自然の美しさや日常の喜びを表現することの多かった清少納言は、キラキラ・インスタ女子。逆に他者への嫉妬や批判精神の強かった紫式部は、ドロドロ・ツイッター女子。こんな風に考えれば、1000年前の女流作家にも親近感を持てますよね。

歴史書にはない、当時のリアルな生活や心情に触れる

漢文による「公的な事実の記録」から、仮名による「私的な心情の表現」へ。その概念や意味合いを大きく変えた日記文学。それぞれの作品には、当時を生きた人々のリアルな暮らしぶりや社会概要が瑞々しく描かれています。結婚や恋愛など、現代と大きく異なる儀礼や環境に驚いたり、七五三の原型となった「袴着」など、今につながる日本文化の源流を発見したり。また恋人やライバルへの嫉妬心や人間関係の悩みなど、人間の普遍的な心模様に触れたり。当時と今、そして作者と自分を比較し、相違点を見つけることで、日本や自分自身に対する新たな発見が生まれるかもしれません。

毎回、授業の終わりには、疑問や感想をまとめたミニレポートを提出。寄せられた疑問については、次の授業の最初に先生から回答をもらえます。この回の疑問は「仮名の元になる漢字は誰が決めたの?」「当時、女性が漢字に触れる機会はあったの?」など。答えは、ぜひ授業で確認してください。

国際コミュニケーション学部 表現文化学科 高橋 麻織 講師

日本文化の源泉を知り、
世界の中の日本を意識しよう。

国際コミュニケーション学部 表現文化学科 高橋 麻織 講師

「日記文学」は、クラシックスタディーズの科目のひとつです。グローバル化が進む社会では、外国の言語や文化を学ぶのはもちろんですが、自国のことを深く知り、発信することも非常に大切。平安時代の日記文学を学び、日本文化の源流を把握することには大きな価値があるはずです。平安時代の日記文学は世界的にも評価が高く、特に紫式部は、ユネスコが選ぶ「世界の偉人」に日本人で初めて登録されたんですよ。私がこの授業を通して伝えたいのは、当時の人々が何を考え、どんな暮らしをしていたのかということ。イメージしやすいよう、教材には漫画なども積極的に活用しています。ですから、古典が大好きという学生はもちろん、古文や古典文法が苦手という学生も大歓迎。「十二単が好き」「平安貴族の恋愛事情が知りたい」「お姫様たちのメイク術は?」など、素朴な疑問や興味を持っている学生に、ぜひ受講してもらいたいです。