生活環境デザイン学科

建築設計実習I

本格的な
設計デザインに取り組み、
建築の知識と技術を統合する。

建築・住居に特化して学ぶ初めての授業

生活環境デザイン学科では、アパレルメディア、インテリア・プロダクト、建築・住居の3分野にまたがる科目で、生活環境をデザインするための基礎的な知識・技術を1年次で身につけ、2年次から3年次にかけて1つの専門分野に絞って学びます。「建築設計実習I」は、学生が専門分野を選択する時期である2年次後期に配置されており、建築・住居に特化して学ぶ初めての設計実習です。これまでに学んだ知識と技術を統合し、設計デザイン能力の獲得をめざします。

半期にわたる授業では、「集合住宅の設計」「オフィスの設計」の2つの課題に取り組みます。集合住宅設計の最終講評が近づくこの日の授業、学生たちは、提案する3次元空間を表す図面やパース※、模型などの制作物を持ち寄りました。これまで、担当教員の村上心先生によるエスキース(設計指導)によって、何度も見直しては進めてきた作品です。そろそろ完成間近となり、最終的なデザインチェックとプレゼンテーションの準備に入ります。※パースペクティブの略称。遠近法を用いて描いた完成予想図のこと。

一人ひとりのアイデアの完成度を高める指導

この段階の設計課題には、どのような条件の敷地に建築するのか、まちはどのような環境にあるのかなどの条件があらかじめ設定してあります。村上先生は、「人が集まって暮らすメリットとは何か」「都市の機能の一部となる集合住宅とはどのようなものか」などの問いを発し、学生が自分なりの答えへの方向性を見つけられるように導いていきます。その答えが、個人のデザイン目標を示すコンセプトになるのです。

百人いたら百通りのアイデアが生まれる設計実習は、一つの正解を求める学びではありません。導き出したコンセプトに従って、設定された敷地条件や使用目的により適した設計をめざすのです。今回のエスキースでも、「この部分の説得力を増すにはどうしたらよいかな」「設計図面だけでなく、説明図が必要だね」などとアドバイスする村上先生。参考になる建築事例が掲載された雑誌を提示してヒントを与えたり、必要に応じて修正例を描いてみせたりと、熱心な指導が続きます。

どんな分野でも応用できる能力を育む

「建築設計実習I」は、2年次前半までの基本的な演習や実習とは異なり、他者のため、社会のための建築を提案しようとする意識を持って設計に取り組むことになります。めざすは、「用(機能)・強(安全性)・美(美しさ)」のバランスのとれた建築デザイン。そのため、毎回の授業はエスキースを通して完成度を高めていくことに専念します。理論的な学習は、並行して学ぶ講義形式の「建築企画・設計論I・II」で補い、知識を統合していきます。続いて3年次に履修する「建築設計実習II」では、小学校やアイディアストア(図書館)などの公共施設と新築ではない再生建築のデザインに挑みます。

こうして、幅広いタイプの建築を設計する実習で追究していくのは、観察を通して環境の優位点と課題を発見し、分析して活用方法と解決方法を提示するという、多くの創作活動に応用できる考え方。企画提案力、デザイン力、プレゼンテーション手法が身につき、建築やデザインに関わる業種に限らず、将来どのような職業に就いたとしても役立つ学びです。

生活科学部 生活環境デザイン学科 村上 心 教授

未来に受け入れられる
建築をめざして

生活科学部 生活環境デザイン学科 村上 心 教授

生活環境デザイン学科では、建築・住居分野に進路を定めるまでに、インテリア・プロダクト分野やアパレルメディア分野と共通するさまざまな講義・演習・実習を通して製図や設計などの基礎を学習します。そのため、新築を前提とした建築だけでなく、建物の改築の歴史の上に成り立つインテリア設計の考えも深めることができます。そうした学びの体系によって、日本の建築系学科では珍しい本格的な「リノベーション建築」を学べるのが本学科の特徴です。リノベーションとは、既存の建物を大きく改修し再生して機能や価値を高めること。建築分野ではいまだ新築が多い日本でも、近年は再生需要が増加しています。私は1990年台半ばから建築再生/地域再生の研究を我が国のファーストランナーとして始め、国際共同研究を行っています。「建築設計実習II」や「建築企画・設計論I・II」「総合企画論」「総合企画実習」「構法計画」などの科目を通して、最先端の学びを伝えています。これからの時代が求める建築を知り、未来の人びとに受け入れられる建物を提案する実力を身につけていきましょう。可能であれば、学部に続いて大学院を目指すとさらに学びは深まることでしょう。

※この記事は、2018年度の授業内容を取材したものです。