バイリンガル教育と英語オンリーの教育、どちらを選ぶ?

「さて問題です。多様なバックグラウンドを持つ人々が暮らすアメリカでは、バイリンガル教育と英語オンリーの教育、どちらが適切だと思いますか?」

例えばこのような問いを立て、映像等の資料から現状を読み取って自分なりの回答を探す、これがこの授業の進め方です。冒頭の問題に関していえば、賛成派・否定派のインタビュー映像を観て、バイリンガル教育にはメリットがある一方、学力低下につながるというようなデメリットも語られていることを知ります。そして次にアメリカの言語地図を見て、英語を話せない人の多さに驚きます。「二カ国語を話せる方がいい」と単純に考えていた学生も、それらの事実を知り複数の切り口からものごとを考えることの意味に気づきます。

情報を鵜呑みにせず、批判的に考える

税金を上げて貧困層を手厚く支援すべきか、税金を下げて企業を呼び込んだ方がいいのか。リーマンショックと人種差別との関係は何か。アメリカ大都市中心部の荒廃をめぐっては、さまざまなテーマが論点となります。映画やドキュメンタリー映像からは、ストーリーだけでなく、風景や人物の服装・髪型までを読み取り、視覚的・感覚的に社会をつかむことができるので、授業では映像資料を多用します。

ただ、映像ならば何でもいいというわけにはいきません。作品には制作した人の思想や社会の思惑が反映されており、うっかりするとミスリーディングされてしまいます。そこで、関連する論文を読み、頭の中でディベートをして、制作者の意図は何かを考える。映像を鵜呑みにするのではなく、批判的な目を持って作品に対峙することが大切です。

「日本には差別がない」のは、本当か

最近は映画や海外ドラマの影響か、ヒスパニック系の文化をかっこいいと感じたり、ブラック系のヒロインをロール・モデルにしたりする学生も増えています。ところがその一方で、日本が既に移民国家になっているという点には感性が及ばない学生も少なくありません。アメリカの移民政策を振り返ることは、大量の外国人を受け入れつつある日本について考えることでもあるのです。そもそも「日本には差別がなくて良かった」という学生がいますが、決してそんなことはありません。在日外国人の問題はもちろん、たとえば被差別部落の問題も、祖先に端を発するという点ではアメリカの人種差別と同じ。そう説明すると、意外な事実に学生は興味を持ち始めます。このように、身近な問題を授業で得た基礎知識と結びつけ、自分自身に落とし込む学びを展開しています。

国際コミュニケーション学部 国際言語コミュニケーション学科 水島 和則 教授

将来的には、アメリカの学生と
リアルタイムのディスカッションも

国際コミュニケーション学部 国際言語コミュニケーション学科 水島 和則 教授

私はもともと社会学が専門で、その視点から現実社会が映像にどう表象され、あるいは表象されていないか、その理由は何かについて研究しています。映画からアメリカを学ぶといえば聞こえはいいですが、表層だけ見ていたのでは正確な理解はできません。例えば、一見リベラルにみえる人種差別映画でも、白人賞賛を目的としていることがあります。映画は、世論を誘導しようと政治利用されているものが実は多いのです。
アメリカ留学を予定する学生もいるので、授業では人種差別とドラッグの関係、その危険性についても取り上げます。そういった知識は、現地でよりアクティブに行動するときに役立ちます。多民族国家であるアメリカは、世界の縮図です。さまざまな立場の人と交流し、そのリアルな生活に触れることで多くのことが見えてくるはず。その一つひとつが世界全体に繋がっていることも実感できるといいですね。